用語集:た~と


対象

 概念存在の一種に分類される、何らかの"もの"。
 その存在に目的や意思は無く、ただ、あらゆる有存在を消滅させるためだけに活動する。
 一般人には観測できないが、記憶修正を免れ得る者には、黒い影のような姿に見える。
 そのタイプによって見た目を変えることがあるが、それは実際のところ、見た目が変わっているのではなく、観測者の無意識が、イメージから外見を作り上げているだけである。
 概念境界の隙を突いて、あらゆる場所に、無作為に出現する。
 それは《アズ・リアル》どころか、《アズ・リアル》中の内世界にも出現し得る。
 人間の意識は、それ自体が一つの内世界であるため、《対象》が人間の意識中に出現し、その者の精神を殺すこともある。
 命名者は東岸定理で、"そこに在るのは分かるが、それを何かだと定めることはできない"ということから名付けられた。
 《アズ・リアル》の法則の一切に縛られないため、「外の世界の法則を用いる」《特異能力》使い、或いは《特異存在》、もしくは「自らの法則を押し付ける」《始原識》持ちでないと干渉することが出来ない。
 この性質の為、ただの魔術師では対抗できない、非常に厄介な存在となっている。

終端に立つ者(ターミナス)

 魔術学会中枢十八席に従属し、様々な学派の魔術師が所属している、戦闘魔術師集団。
 近年多発している、学会所属魔術師および未所属魔術師の危険行為に対処・牽制する目的で結成された。
 まだ設立から日は浅いが、この動きは既に外部組織から認知されており、警戒を強めている。
 
 通常、魔術師が魔術学会の意思に反して、学会所属魔術師や一般市民に危害を加えるような行為を行った場合、学会は所属魔術師に対処を命ずる。
 しかし、多くの魔術師は戦闘行為ではなく、自らの理想の成就の為に魔術を究めているものであり、特に応用の利かない低級な魔術師の場合、その戦闘適性には疑問符がつくことが多々ある。
 実際、こういった「任務」によって、戦闘能力の低い魔術師が対応にあてられ、死亡する例は少なくない。
 この現状について、以前より、一部の学会所属魔術師からの批判の声は出ていたが、最近発生し、交戦によって多数の犠牲を出した「学派長補佐の学派長暗殺未遂事件」を契機に、主に低級魔術師の間で不満が爆発する。
 これを受けて、魔術学会中枢十八席は、「戦闘行為に特化した魔術師の集団」――《終端に立つ者(ターミナス)》の結成を実行するに至った。
 その名の意味は、「秩序を創る者」――魔術学会と、「秩序を乱す者」との間の境界線上に立つということであり、苛烈な戦いに身を置く覚悟を示すものである。
 とはいえ、全世界で発生している魔術師達の凶行に彼らだけで対処出来る訳ではないため、依然、「通常の魔術師」に任務を任せざるを得ない事態は発生している。
 それでも、これまでのように、たとえば「二、三年かけてようやく、詠唱在りで炎を発生させられるようになった程度の魔術師が、戦場に繰り出されてあっけなく死亡する」といった事態の頻度は減少していくだろう。

 《終端に立つ者(ターミナス)》のメンバーは、今のところ公募ではなく、十八席による任命制となっている。
 設立から間もないため、その人数は三十人程度だが、これから更に増えていくことが予想される。
 また、その三十人の中でも、会議に参加した十八席メンバー全員の推薦を得た所属員七人は「ナンバー持ち」と呼ばれ、その名の通り、Ⅰ~Ⅶの数字の称号を与えられている。
 以下に「ナンバー持ち」の簡単なプロフィールを示す。

◆No.Ⅰ《二重否定(デュアル・ネガティブ)》 彩雲浄土(さいうん・じょうど)
 二十代前半の金髪の青年。常に明るい性格で、ともすれば緊張感が欠片もないように見えるが、敵対者には全く容赦がない。
 暴力団の組長である妹が居るが、幼い頃から別居しており、あまり付き合いはない。
「魔術師を殺すためだけに」魔術を学んでおり、その戦法の一切が、ただ魔術師を殺すというだけの事に特化されている。
 魔術師にあるべき、自身の魔術に対する矜持というものが彼には皆無であり、それ故に、「魔術に拘るあまり、戦闘における有利を取り逃す」ということがない。
 得意とする魔術は何もない、本人曰く「にわか魔術師」。
 しかし、若くしてあらゆる学派にコネクションを作り、学んだ技法からひたすら対処方法だけを練り上げてきた。(通常、こういった目的で魔術を学ばれることを魔術師は嫌がるため、これは彼のコミュニケーション能力の高さの証左である。)
 戦闘は、エンチャントで強化した片刃剣とレバーアクションライフルを同時に用いるという、特異なスタイルを取っているが、必要ならば魔術そのものによって攻撃も行う。
 No.Ⅱのフィラデルフィアを従えているが、彼女のことを「お姫様」などと呼んでおり、戦闘以外の場面では大抵こき使われている。

◆No.Ⅱ《夜の国の王女(ヴァンパイア)》 フィラデルフィア
 長い金髪を持つ、絶世の美少女。立ち振舞はその魔術名の通り、まさに「王女」であり、見る者の心を奪ってしまう。
 いつも輸血パックを持ち歩いている。
 その正体は魔術師ではなく、異なる世界からやってきた特異存在。
 以前は人間に危害を加えていたが、特異能力者に討たれ、魔術学会に身柄を拘束される羽目になる。
 その後は暫く幽閉されていたが、「学会および彩雲浄土の命令に従うこと」と「人間に危害を加えないこと」を条件に、《終端に立つ者(ターミナス)》の一員として解放されることになった。
 戦闘方法は、人間離れした身体能力と魅了能力。後者を活かして度々浄土に下剋上しようとしているが、魔術によって無効化されている。
 
◆No.Ⅲ《秘蹟暴き(アンチクリプト)》 ベルナール・ベルレーヌ
 金髪を少し伸ばした美青年。非常に嫌味な男であり、常に自慢話ばかりして、自分の優位性を誇示しようとしたがる。
 出身は権威のある魔術師の家系であり、彼も幼い頃から魔術を学んできている。
 その能力は人並み以上であり、(無論、学派長に追い縋れる程ではないが)学会でも上位に位置する、高い実力を持つ。
 しかし、彼が魔術を究める目的は「理想の追求」ではなく「他人が考えた魔術を踏みにじること」であり、その悪辣さを隠そうともせず、魔術名としている。
 境界魔術を主軸に、記憶魔術や数理魔術の理論をも混合して「解析」に特化させた彼の魔術は、「魔術の蹂躙」に関して非常に優れた効力を持つ。
 彼と対峙した魔術師は、自らの魔術の構造を暴かれ、対策・改竄されたあげく、自らの魔術によってプライドも命も破壊されてしまうだろう。
 実力は学派長すらも認めているほどだが、学会有数の嫌われ者でもある。

◆No.Ⅳ《文明回帰(プリミーバル)》 プリムラ・アニマ
 長い白髪を左右でまとめている、幼い少女。大人しく可愛らしい、人形のようにも見える女の子。愛称「プリム」。
 人と話すのが苦手であり、いつもペットであるライオンの陰に隠れている。(但し、魔術をエンチャントされたライオンである為、一般人には目視不可能。)
 一見、とても「戦いを極めた魔術師」には見えないが、その内心は人間に対する憎悪で渦巻いており、人を殺すことに躊躇いがない。
 辺境の生まれであり、かつてはその白い肌・白い髪を珍しがられ、監禁や性的虐待を受け続けていたが、そこを魔術師に保護される。
 魔術と共に言葉を覚え始めたのはそれからであり、未だに喋りは片言だが、一方で魔術に対しては類稀なる才能を発揮している。
 彼女の得意魔術は「動物との交信」であり、言語を用いて無数の動物と会話・使役可能な上、彼らを魔術によって強化することで攻撃に用いることも可能。
 基本的に人間嫌いだが、「殺して良い人間」と「殺してはいけない人間」の区別はつくようだ。
 
◆No.Ⅴ《死せぬ幻影(ゲシュペンスト)》 ライル・バルツァー
 茶髪の、体格が良い男性。三十~四十代ほどに見えるが、実年齢は百歳以上。
 必要以上に人と関わることはしないが、コミュニケーションが取れないわけではなく、時折冗談も言うが、あまり表情が豊かではないので笑えない。
 元傭兵であり、魔術に関わる前も、戦争に加わって数多くの命を奪ってきた。
 始源識《殺人》によって、天性の「殺しの才能」と殺人衝動を持ち、人を殺すことにかけては一切の余念がない。
「仕事」として殺しを引き受けることで衝動を消化しており、こと殺しに関しては、引き受ける殺しの対象を選ばず、手段も選ばす、あらゆる雑念を振り払って最適解で敵を屠る精神性の持ち主。
 だが、彼自身は精神的悪人ではなく、殺すことしか出来ない己の在り方に疑問を抱いており、「”自分を殺そうとする自分の意思”を殺してしまうため」自殺すら出来ない自らを止める手段を得る為に、魔道へと足を踏み入れた。
 しかし、百年経っても自らの運命を否定する方法は見つからず、自分を殺して止められる強者を探して回っている。
 得意魔術は身体/武装エンチャントと魔術破壊。戦闘スタイルは彩雲浄土と同じく、徹底的に魔術への対抗策を練るタイプだが、彼以上にその側面が強く、多くの魔術師を「一切、魔術を使わずに」銃器などで屠っている。
 識による「殺人行為」への補正も相俟って、ただの魔術師では及ぶべくもない総合戦闘能力を持っており、並の魔術師がまともに戦って勝てる相手ではない。

◆No.Ⅵ《死を解き明かす者(ディスクロージャー)》 ゼノン・クラヴィウス
 黒髪を少し伸ばした二十代のように見える、陰気な男。実年齢は四、五十代を超える。
 ベルナールと同じく、それなりに権威のある魔術師の家系の生まれであり、「命というものの真髄」を解き明かし、生命の創造に至ろうとしている。
 一見、典型的な探求者型魔術師だが、彼は他者を実験動物のようにしか思っておらず、同時に「至って理性的に、無感動に実験動物を捌く」ため、戦闘慣れしていない魔術師が陥りがちな甘さがない。
 ただし、彼が「生命の創造」という理想に執着するようになった原因であり、既に死亡しているとある少女の幼い頃の姿がプリムラに似ていることから、彼女には執心しているようで、彼女の師匠兼保護者として世話を焼いている。
 
◆No.Ⅶ 空席
 No.Ⅶとして登録された者が戦闘によって死亡したため、現在は空席状態。
 次に十八席全員の推薦を得られる者が現れれば、その者がNo.Ⅶとなるだろう。
 

デジタル魔術

 携帯端末などのデジタル機器を用いた魔術の総称であり、一般的には二つの使用法が存在する。
 一つは、心言界魔術において、デジタル機器の操作や、そこから出力されるサウンド、グラフィック等を観測することを詠唱として扱う方法である。
 もう一つは、狭義デジタル魔術と呼ばれるもので、数理魔術の使用時に与える値(個体や性質、関数の総称)をデジタル機器で導出し、出力を逆流神経に入力して魔術を処理するというものである。
 自力で演算を行うことが前提となる数理魔術と比べ、演算結果を魔術により逆流神経へと送信する手間が加わるため、若干の遅延が存在するものの、"そもそも、その演算を自力で、しかも高速で行うことが難しすぎる"という欠点は解消されているため、ベースとなっている数理魔術そのものよりも遥かに扱いやすい。
 また、デジタル魔術には、デジタル魔術特有の"付け入る隙"が存在する。
 それは、魔術そのものや術者ではなく、デジタル機器を対象とした妨害によっても被害を受けてしまうという点である。
 例えば、相手のデジタル魔術師が実行している魔術プログラムを改竄することで、意図していなかった関数を実行させ、魔術を暴発させるといったことが可能になってしまう。
 その為、警戒心の強い者達は、ネットワーク越しに不正アクセスされることを嫌い、魔術行使専用のスタンドアロンなデバイスを用意していることが多い。

東岸愛理(とうぎし・あいり)

 現実世界に住む少女。
 空乃詩とは小学生時代からの付き合い。詩が変人であるため、そんな彼女と付き合っている愛理も、周囲から物好き呼ばわりされている。
 一見おとなしい少女だが、それは単なる強情で、折りたくない内心である"完璧主義かつ理想主義"を保護するための態度でしかない。
 詩ほど重篤ではないが、コミュニケーション障害なところがある。
 これといって得意なことがなく、平凡にも満たない彼女が詩に抱く一番大きな思いも"理想"であり、その為か、自身では"友達として詩を愛している"と考えていても、無自覚に、少々過剰な執着心を見せることがある。また、同性愛者の気がないでもない。
 詩の創造する世界、とりわけ《アズ・リアル》には多大な愛を注いでおり、それ故に《アズ・リアル》が崩壊の危機に瀕してからは、その内世界に《特異》の設定と、自身の分身である東岸定理を導入して、救済に導こうとしている。
 アズ・リアルに存在するキャラクターに"東岸愛理の干渉"という、最強クラスの特異能力を与えることが出来る。
 PC達はこの力により、《死殺》や、物語の主人公になる能力、愛理の目線で物語を観測する能力を得ている。

 東岸定理が彼女の分身でありながら詩の姿をしている一方で、定理の妹である東岸背理は、愛理に近い外見をしている。
 それは愛理にとって、定理が"世界に対する理想"ならば、背理は"自身に対する理想"だからである。
 背理は同性愛者だが、それは愛理自身の、無意識的な欲求が顕現しているのだと見ることが出来き、また彼女が自身の理想を貫いていることも、現実において理想を主張したくても力がないが故に出来ないという、愛理の思いを表している。

 現実世界の住人であるため、直接ゲームに関わることはないが、彼女の"世界の今の姿を認めたくない"という欲が特異を生んだという意味では、このRPGにおいて最も重要なキャラクターであり、このRPGを至極簡単に表現するならば、「彼女のわがままに振り回されるゲーム」という事になる。

東岸家

 日本に存在する特殊な家系で、神領家とは双璧をなす存在とも言える。
 この家系に属するものは、何らかの特別性を宿し、一般の中に埋没できない運命を辿ることになる。
 それは云わば、"物語の重要人物になる権利と義務"とも表現することの出来る性質である。
 神領家に比べて歴史はかなり浅いが、本家に属する東岸定理や東岸背理は、絶大な力を有する。
 血統そのものに意味がある神領家とは違い、東岸家は、"東岸"という名前が力を宿しているため、養子であっても、その者に影響を及ぼす。
 "直感的な力"に長ける神領家に対して、東岸家は"理性と思考の力"に優れており、思考処理を2~64の処理系統に分割して並列的に行うことが出来る、多重高速思考能力を有する東岸姉妹によって、更にその傾向は強まった。
 東岸家は、その名が持つ力を継承し、この社会の闇に潜んでいる"特別性"、即ち"常識あるいは一般性から外れたもの"を管理することを家訓としているが、東岸第五世代である定理、背理、合理は、家訓というよりは、独自の価値観・信念に従って行動している節がある。

特異

 特別性の一種。《アズ・リアル》を構成する《確率の空》に記述されていない概念、即ち、概念境界の外側の概念。
 特異存在、特異能力、特異武装の三つに分類される。
 《アズ・リアル》の概念境界の磨耗によって流入してきた。
 《特異》は"本来、在る筈のない事象"であるため、特異能力や特異武装を行使した場合には世界に歪みが生じ、崩壊・消失していく。特に、存在するだけで世界に影響を及ぼす特異存在は、生きているだけで世界を少しずつ破壊する。
 《特異》の概念を定めたのは、東岸定理という少女の一個人であるため、《魔術》程に一般的なものではない。しかし、《特異能力》に目覚めると、大抵の場合は、どの様に存在を知ったのか不明だが、彼女の方から接触してくる。ただし、それは現在の話である。《特異能力》の項で述べる通り、その力自体は「《特異》という概念を知らなくても使える」ものである。そのため、彼女が特異能力者に対して現在のような姿勢を取っていなかった5年ほど前に既に覚醒していた者は、「それとは知らずに使っている」事が多い(多いとはいえ、そもそも特異能力者自体が稀少な存在だが)。

特異存在

 自律行動する《特異》。要するに、外の世界の存在。
 別の概念で存在しているため、どの様な性質を持っていて、どの様な外見をしていようが、基本的には《特異能力》を有する者しか干渉できない。目視すらも出来ない。
 本人の意思と関係なく、存在するだけで世界を崩壊させていく厄介ものだが、自身の特異性をある程度コントロールして、《アズ・リアル》に順応できる個体も稀に存在する。

特異能力

 人間存在に宿り、それが異能として顕現した《特異》。プレイヤーキャラクターは、基本的にはこの力を有する。
 世界の外部の概念である《特異》が異能となった結果として、自らの立つ世界の法則を超越する力と所有することになる。
 具体的には、PC達は、《特異能力》の一種に覚醒することで、自らの行動に特異性を与え、《特異存在》に干渉する能力と、死を超越して致命傷を"致命傷でなかったことにする"行為、《死殺》を使用できるようになる。前者は、それを行っても十分に修正が働く程度の損傷しか世界へのダメージを与えないが、《死殺》は、誰かが一度行うだけで、辺境の村一つの存在が無かったことになる程の危険性を秘めている。
 また、自身の特異性を微かに顕現させることで、意図的に周囲の一般人に対する記憶修正を行うことが出来るようになったり、上位次元からの目線で、状況を俯瞰すること、《視点分離》も出来るようになる。
 但し、《死殺》や《視点分離》は、特異能力者であっても中々出来るようなものではなく、PC達の宿した其れが、いかに"特別製"であるかを示すものとなる。
 特異能力者の多くは、元々自身が持っていた技術に(必要ならば)特異性を付与して戦闘を行うが、《特異》そのものを扱うことに長けた者は、直接、世界の外部の法則を用いて戦闘することも可能とする(後述する《特異武装》はこれに当たる)。
 《特異能力》に目覚めるには、元々の素養が必要である。素養がある者ならば、《特異》という概念を知っていようがいまいが、「冒涜的で、狂気的なまでに現実を否定し、その超越を望むこと」によって覚醒することがある。逆に、それが出来る者は、元々その素養を有していたと言える。
 目の前に、その者にとって認められない現実が現れたとき、それを「現実だから仕方がない」と諦めるのか、それとも「こんな現実は変えてやる」と思うか否かが、《特異》へ到達するかの分かれ道となる。
 プレイヤーキャラクターは、《特異能力》という概念を知らなくてもよい。実際のところ、自ら積極的に状況に関与することが難しい東岸定理は、特異能力者の把握が全く追いついていないし、接触を行ったところで結局、どのような姿勢を取るかは、その人物に委ねられる。ただし、(それを"制御できている"と言えるのか否かは別として)《特異能力》自体は前述の通り、「素養があって、その気になれば使える」というもので、直感的に使おうと思えば使えるため、「それが危険な力だ」という事も感覚的に理解できる。
 なお、東岸定理は、特異能力者の規制・統制を行う意思を見せている一方で、何故だか、意図的に"特異能力者でなかった者"への接触を行い、その者の力を覚醒させることがある。

 特異能力者は、特別性が存在することをダイレクトに認識できるため、近くにそういった存在が居ることも感知することが可能である。

特異武装

 《アズ・リアル》に直接、世界外の法則を持ち込むことによって戦闘する技術。《特異能力》が、「特異を扱う者のベースとなる、共通な性質」とするならば、こちらは「個別の特異を自由に扱う力」。《特異能力》が、特異能力者本人に宿った特異性であるのに対し、《特異武装》は、本質そのものは世界の外側にある。とはいえ、《特異武装》を用いるためには《特異能力》によって概念境界を突破する必要があるため、特異能力があることは前提となる。
 基本的には高次元の概念であるため、五感で扱うことは出来ない。それにも関わらず"武装"と銘打っているのは、一つの概念を、複数の特異武装使いが同時に習得し、使用できるため。
 使用の際には、感覚できないことから、思考による存在仮定が必要となる。"そこに存在する"と仮定すればそこに存在し、形状にも捉われないので、何らかの外見を見出したのならば、その外見となって現れる。より具体的な使用手順としては、まず、特異能力によって特異武装に接続し、それを一旦、自身の内世界に展開した上で、外世界に出力する。即ち、途中からは《流出》と同様である。しかし、自身の元々持っている「世界」を出力する《流出》に対して、特異武装は使用のたびに接続が必要となるため、行使するのに時間が掛かってしまう場合が多い。
 特異武装を用いることは、かなりの高等技術である為、特異能力者の中でも、これらを行使できる者はそう多くない。
既知の特異武装の中では最強の力を持つ《理想剣》を使用する東岸背理や、東岸定理は、特異武装のことを《論理武装》とも呼んでいる。

 既知の特異武装には、主に以下のようなものがある。
  • 虚数剣:虚数領域の特異武装。世界に概念レベルの僅かな創をつけ、世界がそれを修正しようとする際に発生するエネルギーで其れを破壊する。主な使用者は東岸定理。
  • 理想剣:理想の特異武装。既知の特異武装どころか、既知の概念の中でも最強の力を持つと言っても過言ではないが、まともに操れるのは東岸背理のみであり、定理ですらも彼女程には扱えない。
  • 具象剣:剣の特異武装。物質界に存在し得る、あらゆる「剣」のスーパークラスであり、任意の形に任意の位置、任意の移動速度を与えた剣を、任意の数だけ呼び出せる。主な使用者は、東岸定理の協力者であり、高嶺由奈香の兄である高嶺弦義。
  • 霊弾:弾丸の特異武装。特異武装としては低級な代物。精神力、即ち、意志そのものを弾丸に変換し、物理的な破壊作用を発生させる。主な使用者は、東岸定理の協力者である天宮真白。
  • 命弾:命の特異武装。「自己」という、ある種の法則の集合体である概念そのものを対象にぶつけ、概念レベルでダメージを与える。「自身を撃ち出す」にも等しいため、使用すればただでは済まない。天宮真白はこれを習得している。
  • 鏡面の逆理:概念改竄の特異武装。「直後に行動を行う」という事実を保存したまま、その実態を乗っ取る。精神に介入している訳ではなく、これから起きる事象そのものを書き換える。主な使用者は東岸定理。
  • 戒天則:拘束の特異武装。「~が起きてはいけない」という抑止的ルールを追加し、それに逆らう存在を抹消する機能を持つ。主な使用者は、東岸第五世代にして、東岸家傍系の一つである「第一傍系」と呼ばれる家系の長女である東岸天理。
  • 解錠則:解放の特異武装。あらゆる意味での「解放」を行える性質を持ち、物理的に対象を解放、即ち内側から破裂させることは勿論、未知の概念に適用することで、「未知の部分」を解放し、その概念を理解することが出来る。主な使用者は、東岸天理の妹である東岸解理。
  • 介入則:介入の特異武装。行動に割り込みを行い、先に行動する能力を持つ。どれだけ相手が使用者より速く移動・行動しても、後出しで先手を打てるようになる事から、機動性の高い相手に強い。主な使用者は、東岸天理・東岸解理の妹である東岸冥理。


特別性

 魔術や神領家の用いる秘術、そして特異といった、一般社会の常識には存在しないかまたは実在しない概念の総称。
 基本的には、これらは精神ネットワークの作用により記憶修正を受けるため、一般人は観測できない。

途心(としん)

 ある事柄について、身体的か或いは精神的か、またはその両方の面で、それを極める事を続けた結果として現れる、自己の存在レベルでの指向性。専心し続けることで、《確率の空》に「自身は、そういう存在だ」と認識させる行為。
 後天的に作り出した始原識のようなもの。生まれたときから「そういう存在である」事を定めている始原識ほどの影響力は有していないが、より自身の持つ特性を確立させ、強化することが出来る反面、より何かに特化することにもなるため、弱点が現れるようになる。
 例えば、ある少女が、ひたすら殺人を続けたとする。すると彼女は、《確率の空》上で「コイツは殺人を行う存在だ」と定められることになる。その結果、「人を殺す」事において、まるで世界が、彼女にはそれを行うことを許したかのように「上手くいく」ようになるが、逆に、彼女は「人を殺す存在であること」を世界から強要され、自然と、それ以外の事が出来なくなる。

思考転(トルク)

 東岸背理をはじめとする《特異武装》の使用者は、「思考すること」を「理力(理知的な思考能力)が回転によって思考結果を生み出すこと」と捉えていることが多い。思考転はその回転の速さ、即ち思考速度を示す。要するに「頭の回転の速さ」。《特異武装》は、「ある結果を起こすための原因としての物理的動作を行う必要性」が零かまたは極端に少なく、オーバーヘッドが少ないため、思考速度がほぼそのまま、行動の手数になる。
また、《特異武装》の中には、そのオーバーヘッドを削減し、動作を省略できるようにするものも存在するため、《特異武装》を用いること以外のアクションを取る場合でも、やはり行動の手数を増やすことが出来る。

  • 最終更新:2018-08-21 17:09:30

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