用語集:か~こ


概念境界

 或る世界について、その世界の内側と外側を決める、世界観の境界。
 メタ的に世界を俯瞰したとき、世界の外に物理法則は存在せず、距離や物質という概念もないため、物理的に何らかの結界のようなものが発生している訳ではない。例えば世界が球状の容を持っており、外殻の様に、概念境界が其れを包んでいるというイメージは不適当である。
 世界の容とは、"その世界で何が起きるか"という事象の集合であって、物理的なイメージで容を捉えることは出来ない。
 《アズ・リアル》内において、地域によって概念境界の損傷の度合いに差異があるように見えているのは、単にたまたま、その地域に《特異》や、其れを求める意志が集中していただけの話である。
 例えば、魔術師を見た一般人が、魔術の存在を知り、魔術師になる機会を得るように、特異や魔術等の異能、即ち"特別性"は、機会という形で物質的な広がりを持って伝染していく。そうやって局所的に循環していくことで、地域によって概念境界の状態が違うように見えてくるのである。
 実際的には、一度特異能力を発現させれば、何処へ移動しても、それを使用することが出来る。
 但し、櫻岡市については真の意味で特別な地であり、"設定"を与えられたことによって、実際にかの地は、特異をはじめとする特別性への接触率が高くなっているが、"何故、櫻岡市なのか?"を知る者は皆無である。
 アズ・リアルにおける神的存在であるアレーティアやアタラクシアは、概念境界の顕現であるが、そもそもアズ・リアルの次元を超越していなければ概念境界を理解することすら出来ないため、そういった存在を認識できる者は少ない。
 東岸定理は概念境界の事を《確率の空(プロバビリティ・スカイ)》と呼ぶこともあるが、単に後者の方がよりしっくりくるから気に入っているというだけの理由であり、別称を用いる事に深い意味は無い(そもそも、最初に概念境界という概念を定めたのも定理である)。

内世界流出(カルネージ)

 単に《流出》とも呼ばれる。
 内世界そのものを外世界、即ち《アズ・リアル》に出力する事で、その内容を空間に適用させる。
 元々の空間で生きていた物理法則等を粉砕し、自らの抱いた法則を押し付ける、強力な技。
 《特異能力》の、"法則を越える"という性質を利用して実現されたものであるため、使用すれば世界が崩壊していく。
 とはいえ、それでも"死を打ち消す"という最大の禁忌に比べれば、ましな部類である。

環境局

 正式名称「環境省生活環境局都市保安課」。ここに地域名を入れた○○分室が活動時の単位となる。
「何らかの”環境変異”によって、生活する市民の安全が害されることを防ぐ」ために環境省に増設された組織で、厚生労働省、気象庁などと連携しながら、都市の異変を調査することが主目的。

 社会の裏側においては「魔術組織でもある」という認識がなされている。それはひとえに、この「環境変異」に「魔術・異能といった超常現象によるもの」が密かに含まれているためである。
 『惟神』や『斑鳩』が時に大のために小を切り捨てる判断をとりうるのに対し、あくまで小市民の生活の側に立ち、表の行政に働きかける組織である。ただし、その成り立ちから日も浅く、一部を除くほとんどの職員は超常の側を知らない一般職員であり、国益のため政府と深く結びついている惟神などと比べると、発言力は弱い。現場では情報封鎖等の憂き目にあうことも多い。
 しかし、表側社会に重きを置く彼らだからこそ持ち得る強みが存在する。
 本来、秘して然るべき超常を「科学」という文法で解析、理由づけし、それを「ありきたりなもの」として地に堕とす行為である。
 魔術師が各々の世界観によって世界を捉え、その体系に従った魔術を使っているのと同様に彼らは、表側の現実に即した「科学」という世界観で全ての本質を捉えようと試みる。

 その立場上、超常を行使する存在と戦闘になることもある。その場合、彼らは決して、強力な異能や魔術を用いることが出来る相手に有利とは言えない。しかし、合理の俯瞰能力および「不条理を条理に落とす力」を職員が「借用」することによって、超常の存在を自らの領域に引きずり込み、強制的に有利性を損なわせた上で戦闘することが出来る。
 即ち、彼らのうちの多くの、異能を持たない職員の攻撃方法は「体術」や「武器」となるであろう。
 このことから、外に出て調査に乗り出す実働職員は、四条五花(しじょう・いつか)なる女性が構成した、現代科学の叡智を結集した理論に基づく体術、また、合理の能力である「俯瞰視覚」(即ち、視点分離)の状態下での戦闘技術、逮捕術などを総合的に盛り込んだ「四条式実戦格闘術」を習得している。
 環境局員が超常的案件に携わるには、一定の実技的能力を認定する免許、通称「第二種」の取得が必要となるが、その必修項目にも「四条式」は含まれている。

 合理に端を発するこの組織がその先に何を見据えているのか。それは末端職員には知らされていない。
 職員たちはただ市民を守りたいがために、世界の表裏の境界を彷徨っている。

惟神(カンナガラ)

 日本に存在する極秘特務機関。「神の御心のままに」という意味の名を持つ。本部は霞が関のビルの最上階にある。
「世界全体において、日本が支配的な立場までのし上がること」を究極目的としている。その為の準備活動として、独自の"特別性"である「神性顕現」という、神の力を現実上にもたらす技術を用いて、社会の裏側で活動を行っている。
 日本政府とは立場上は独立しているが、実際のところは繋がりがあり、政府の中でも"特別性"について理解のある一派は(大抵は懐疑的であるが)、内密に惟神を動かすという事がしばしば起こる。
「日本という国の為に」という点では、神領家の有する斑鳩機関と同様な方向性を有しており、実際、かつての世界大戦の裏で起きていた"常識外の力による抗争"では、共同戦線を張っていたこともある。
 しかし、必ずしも友好的なのかと言えばそうでもない。斑鳩機関が、飽くまで「日本の守護」を目的としているのに対し、惟神は、より積極的な関与を目論んでいるため、斑鳩機関は、それがかえって日本に悪影響を及ぼすのではないかと警戒しているのだ。
 とはいえ、やはり「日本を害する異分子は許さない」という姿勢は同じであるため、現在では――例えば魔術学会と《神殿》のように――明確に敵対した関係ではなく、互いに注意しながらも、必要であれば協力的な態度を取っている。
 しかし、そのような防御的な立場を取る「保守派」に対し、かつての惟神の実質的支配者であった鳴神六堂の意志を継ぎ、世界に革新をもたらそうとする「旧態派」も未だに存在しており、組織全体が一枚岩とは言えない。

 斑鳩機関が、古来より継承されて現在には広く拡散した、神領家の血統によって成り立っているのに対し、惟神は、明治時代に政府が設置した「神祇省」という機関を大本にしている(詳細はスキル:惟神の項に記載)。現在は防衛省下の「特別事案対策局」ということになっている。

惟神旧態派

 惟神の中でも、旧来の覇権的思想を唱える派閥。福羽聖司曰く「年寄り共」。
 その構成員や活動内容を知るものは組織内部においても少なく、影から「表の惟神」への影響力を及ぼしている。
 しかし、2014年に旧態派の一人である天田正孝が起こした、魔術テロ集団や自衛隊をも動員し、市街規模の危害を出した「朧月事件」によって、その存在と危険性が他の組織にも知られることとなった。
 単独の指導者は居ないとされるが、実際には鳴神六堂一人の意志・思想に従っている。その為、現在においては組織の理想も「日本を世界の頂点にする」ことから「あらゆる反対者を敵に回してでも、世界の秩序が保たれるように改革する」ことになっている。
 現在は、その為に必要な「新たな神」の創造方法を模索しているようだが、六堂自身が構成員の前に現れることは稀であるため、それぞれが思い思いの方法で理念を実現しようとしており、朧月事件のような「暴走」も見られる。
 
 元々、惟神を支配していたのは彼らであるため、強力な神性顕現の使い手が居る他、六堂が外部から誘致した異能者などが加わっている。その為、たかが一派閥でありながら、組織的影響力だけではなく、全体の武力も非常に高いとされている。
 主な異能者は以下の者達である。
■鳴神六堂(なるかみ・ろくどう)
 黒髪短髪の軍服を来た男性。青年のように見えるが実年齢は不明。
 かつての惟神の局長であり、現在でも旧態派においては実質的指導者とされる。
 自らの理想を実現するための方法を模索しており、あまり人前に姿を現すことはないが、一部の人間には直接、自らの意思を伝えることもある。
■神領逆凪(じんりょう・さかなぎ)
 黒髪の女性。19歳。生まれは神領の或る分家であり、使用する体術にもその趣が見られる。しかし、家系に対する憎悪に塗れた祖霊「逆凪」を宿したこと、彼女自身の性格から、現在は本家からも分家からも絶縁状態。
 気が短く攻撃的であり、以前から、日本の秩序を守るためには「受け身の守護」などではなく「攻勢に出ること」が必要だと捉えていた。その為、惟神に所属することにしたが、実際には、現在の惟神は保守派への移行が進んでいた。
 そんな中、朧月事件が発生し、その調査に向かうことになる。その折で旧態派との相互認識が出来、事件終結後、鳴神六堂から「お前の力を最大限利用してやる」と誘われ、それを進んで受諾することとなった。
■千代田暁(ちよだ・さとる)
 黒髪・中肉中背の陰気な表情の男性。26歳。淡々と任務を遂行するが、恋人の前では優しい振る舞いを見せる。
 数年前は一般人であったが、或る特異存在が被害を出したことにより、自身は特異能力に覚醒して救われたものの、恋人は瀕死の重傷を負う。
 この際、たまたまその場に派遣されて来ていた惟神旧態派構成員が「彼女を救う」ことを約束し、旧態派傘下の病院に収容した。
 実際には、「恋人の命を保証する代わりに、組織の命令で動いてもらう」という形で暁の力を利用するための罠であり、彼女を人質に取られた暁は、渋々、惟神の下で働いていた。
 表向きは「正規の惟神構成員」であるものとして、聖司の命令で動いているが、旧態派が動き出した時に、そのままで居る可能性は決して高くないだろう。
 一方で、決して組織に自分の意志を重ねていないことから、旧態派に対して何らかの形でのカウンターとなる可能性もある。
■天田正孝(あまだ・まさたか)
 黒髪の柔和な雰囲気の、眼鏡をかけた青年。27歳。
 大正~昭和の時代、六堂に協力していた、天田正文(-まさふみ)という男の子孫。その為、「なるべくして旧態派になった」といった感じであり、コネクションを多く持つ。
 旧態派内での権力はそれなりに高く、傘下の魔術テロリストや、六堂の息がかかっている自衛隊を動かすほどの権限を持つ他、自身も高い魔術技能や特異能力を持つ。
 熱烈な六堂シンパであり、彼の理想を実現するため、「人工の神を生み出すことによって、世界を一度壊し、作り直す」ことを目指した「朧月事件」を発生させる。大都会・朧月市を自衛隊によって封鎖し、市内に多くの一般人の犠牲者を出し、SNS上の話題にもなった当事件によって、旧態派という存在が、惟神外の各組織に認知され始めた。
 但し、六堂自身は決して「今の世界を否定すること」は望んでいないため、本件は完全に、彼の暴走行為だと言える。
 朧月事件において殺害されたと思われていたが、惟神旧態派所有の病院で治療を受けているらしい。
■彩雲彼岸(さいうん・ひがん)
 ウェーブのかかった金髪の少女。18歳。
 フランス系日本人の設立した犯罪組織「彩雲組」の現組長であり、その立場を知る者からは《シャノアール(黒猫)》と呼ばれることが多い。
 小柄で非常に愛嬌がある反面、「その姿を見たら死を覚悟せよ」と言われるほどに残虐性が高い。
 惟神旧態派とは利害関係の繋がりであり、組の活動を支援する代わりに、惟神の非合法な汚れ仕事を引き受けている。
 外見に反した圧倒的なカリスマから、組内構成員からの信頼と畏怖が篤く、彼女の命令ならば何でも聞く。また、本人も「他者の認識を改ざんする」類の異能者であり、銃器の扱いにも慣れているため、戦闘能力が劣ることはない。
 基本的には他人を尊重しないが、「社会」に留まらず「世界」を本気で変えようとしている六堂には、心の底から憧れている節がある。

記憶修正

 精神ネットワークが持つ作用。
 一般人の場合、"異常現象であるとしか思えない"現象の記憶について、理解できないものに対する恐怖感を消去するため、ネットワークの集合無意識が、自動的に記憶への修正をかける。
 一般人が、多くの場合は一般人のままで生きるか、或いは一般人のままで死ぬ理由はこの作用にある。
 《特異》や魔術をはじめとする異能、即ち特別性を宿した場合、その人間は大なり小なり異質な存在となるために、ネットワークとの距離が開くことになる。彼らが自身の行使する異能を観測できるのは、これによって記憶修正を免れている為である。
 記憶修正は、精神ネットワークに繋がっている個々人にとっては、一見、「危機が迫っても、それが全く観測できないため、危険を避けることすら出来ずに死亡してしまう」という、危うい面があるように見える。しかし、もし精神ネットワークに繋がったまま、記憶修正を受けない場合、特別性、特に"この世のものではない概念"である《特異》に曝されてしまった者は、もしそれらに対抗する術を持たない場合、結局のところはどうする事もできず、ただ理解できないものに触れたことによる狂気に苛まれ、その狂気を精神ネットワークに伝播させてしまうのである。
 それ故に、一般人にはほぼ必ず記憶修正が働く。逆に、特別性と共に生きていくことになった者は"異分子"であるため、精神ネットワークから切り離される。即ち、記憶修正を免れることと、精神ネットワークから離脱することはほぼ同義である(ただし、精神ネットワークへ意識的に干渉できる者は、その接続度合いを任意に操作することも可能であるが)。
 つまり、記憶修正とは、「助かる可能性の低い一個人」を見捨てて、「多くの一般人」を恐怖と狂気から救うという、フェールソフト的役割を持つ作用である。

 なお、記憶修正は、過去に遡って行われる。従って、もし何らかの理由により、特別性を有している者が「普通の人間」に戻った場合、その間の記憶も曖昧になるが、そのような状況になることがそもそも多くない。

記憶魔術

 魔術学会に認められている、十八の魔術学派のうちの一つ。
 学派のトップは、ニコラ=ウィンスレットという少女であり、学会中枢第十八席のうちの第十席を頂いている。
 記憶魔術は、記憶を扱うことを目的とした魔術学派。
 "記憶魔術と言えば、記憶から現象を引き出す技"だと考えられており、実際にそれは、記憶魔術を戦闘運用した場合の基本動作である。
 しかし本質的な探求対象は、記憶を扱うことそのものである。
 例えば、外部に記憶を保存し、必要な時に脳内に瞬時に戻す技術も、彼らの専売特許となっている。
 記憶魔術自体を究めることが、多様な現象の再現に繋がるため、戦闘時のレパートリーが非常に広いことでも有名。
 ただ、これは飽くまで現象を再現しているに過ぎず、その力そのものをコピーした訳ではないため、劣化が避けられないというデメリットが存在する。
 例えば、誰かが温度を操る力で炎を出していたとしても、その記憶から引き出せるのは"炎"という現象だけであるため、本来の使用者が可能とする、"温度を下げて対象を凍らせる"等といった、記憶に無い利用法は出来ない。
 劣化が特に激しいのは、《特異武装》のような"物理的に何が起こったのか解らない"力であり、そういった力をまともに再現することは実質的に不可能である。
 とはいえ、それは"原因の本質を理解せずとも、その結果としての現象を扱える"という事でもあり、これがレパートリーの広さの理由にもなっているため、一概に否定できる性質ではない。

儀式魔術

 魔術学会に認められている、十八の魔術学派のうちの一つ。
 学派のトップはアレス=フラウロスという、権威主義的な男で、学会中枢第十八席のうちの第十七席を頂いている。
 儀式魔術は、現実世界における近代西洋魔術のように、陣や蝋燭などのシンボルの配置や瞑想などの行為を用いて儀式を完成させ、それに沿った魔術的結果を得るというものである。
 《アズ・リアル》においては、学会十八学派に数えられてはいるものの、識術をはじめとする他の学派の影に隠れており、衰退が著しい学派である。
 その理由は、ほぼワンアクションで魔術が行使できる識術と違い、儀式という、行使に伴う準備が煩雑に過ぎ、即効性と簡便さに欠ける為である。 
 その為、戦闘に用いるには些か工夫が必要となる。
 しかし、儀式魔術には利点も存在する。それは、儀式場そのものが術者としての性質を持つ点であり、これによって、術者がその場を離れても魔術の効果を長時間保ちやすいというメリットが生まれているのである。

偽世界(ぎせかい)

 《アズ・リアル》の別世界ではあるが、どの別世界よりも其れに近い世界。
 近いとはいっても物理的な距離ではなく(そもそもメタ世界に距離という概念は存在しない)、観念的な、言葉で"近い"としか表現できない近さである。
 背中合わせの関係と表現できる。
 技術レベルはアズ・リアルとほぼ同格だが、生活水準は劣悪である。
 人々は、とある巨大都市一つに押し込められて生活しており、それ以外の地域はただひたすらに、不毛の荒野が広がっている。
 その様な環境であるため、世界的な資源不足に悩まされており、僅かな資源をめぐって、日常的に争いが発生している。
 偽世界において、魔術の中でも、識術は一般的に知られている技術であるため、大っぴらに戦いの道具として使われている。
 そんな中、世界を統合管理する、統一政府の中でも過激派に属する派閥は、過去に"アンファング"という、最高位の識術師が何処かへ去った出来事から、別世界の存在を予測し、侵略を企てている。
 彼らは既にアズ・リアルへの移動の識術を確立させており、それを用いて、"狩猟者の剣"、或いはV∴G∴という実働部隊にアズ・リアルの強行調査を行わせている。
 ただ、穏健派は、そのような侵略行為を咎めており、政府の中ですらも対立が起きている。

 偽世界には《対存在》という人間が存在する場合がある。
 これは、《アズ・リアル》のある人物と対になっている存在であり、《アズ・リアル》で、人物Aと人物Bの間に何らかの関係性がある場合、偽世界でも人物Aの対存在と人物Bの対存在は、何らかの関係性を持つ。
 とはいえ、共通するのは"無関係ではない"、"見た目が酷似している"、"性格に共通点がある"程度のもので、生死は同期していない。
 こういった存在の事は、偽世界出身の者ならば、知っている場合が多い。
 このような存在がある理由は、偽世界がその実、《アズ・リアル》から完全に独立していない為である。魔術的観点で言えば、双方の世界を構築しているセフィロトの樹において、アツィルト界が同一である、即ち、ごく高い抽象レベルで連結されているのである。

 偽世界の魔術師は、"自らが何のために識術を使うか"といった信念を表明する為の「識名」を持っている場合が多い。

 偽世界最高の識術師は三人存在する。彼らの識術の能力が、アツィルト界までの逆流を可能とし、かつそのような者が他に存在しない事から、《三柱(サード・オーダー)》と呼ばれている。神の如き力を持つ銀髪の少女アンファング、"魔術師(メイガス)"の肩書きを持つ金髪の少女アマリア=シュロスシュタット、内気な黒髪の青年イツキが《三柱》とされる。

教会

 古来より存在する退魔機関。本部はバチカンにある。
 彼等にとっての「魔」とは「条理にそぐわない力を振るうもの」、即ち、特別性を悪用する者である。
 識術が広まり、魔術学会が発足する前から、独自に発展させてきた魔術を用いている。
 国際的に活動しており、名前の通り、教会を隠れ蓑にしている事が多い。

境界魔術

 魔術学会に認められている、十八の魔術学派のうちの一つ。
 学派のトップは、メリア・フランシールという女性であり、学会中枢第十八席のうちの第三席を頂いている。
 境界魔術は、概念と概念を区分する境界を操ることを目的とした魔術学派である。
 彼らはあらゆるものが、区別されることでそこに存在していると考えている。
 例えば、自分と他人の境界が存在しなければ、自我が保てないように。
 ある概念が存在するのに絶対的に必要な境界は、"其れと、其れ以外"の境界であり、高位の境界魔術使いは、その境界を破壊することで其れを消滅させることが出来る。
 より直感的な利用法としては、連続していない空間を連続させたり、連続している空間を遮断したりといった技術である。
 また、境界魔術では、魔術そのものがある種の境界に囲われることで存在していると考えることから、内容を変化させずに境界を縮める、魔術圧縮も彼らの探求分野である。
 メリア・フランシールの娘であるマリー・フランシールは、特にこの分野に関しては類稀なる才能を発揮しており、彼女の解く境界魔術は非常に処理速度が速いのだが、この点に関して、あまり学会からは注目されていないようだ。
 一般的に、境界魔術師は、社会間の「境目」を重視するため、社会の表側との折り合いをつけ、互いに深く入り乱れない事を望んでいる場合が多い。

虚数領域

 概念境界の内側を「世界」と表現するならば、これは、概念境界の外側の、「作られた世界ではない領域」を示す。
 世界ではないため、そこには、《確率の空》も存在しない。かといって「このような事象は絶対に発生しない」という設定も無い為、何も手を加えなければ、あらゆる事象が入り乱れている、カオス的な空間となっている。
世界が「創造主が意図して創り上げたもの」ならば、虚数領域は、創造主の無意識的領域と表現しても良い。
 通常通りの、物理的な位置や距離の概念は存在しないため、物理的存在性に全く依存せず、概念レベルで存在を確立できるようなもの、即ち神か、神に匹敵する存在でなければ、虚数領域に存在することはできない。
 特異存在や特異武装は、《アズ・リアル》の外側の"世界"に根源をなすものである事が多いが、偶然の積み重なりによって、虚数領域上に、確立された何らかの「個」である概念が生まれ、それがやがて、それらに分類される概念となる場合もある。

虚数領域方程式

 通常の数理魔術に虚数領域、つまり「世界の外」という概念を加えた、文字通り「特異的な」数理魔術用の方程式。
「特異」を知るごく一部の数理魔術師たち――基本的には特異能力者か、特異存在を兼ねている――が、魔術とはいえ「人の領分」である通常数理魔術から一歩踏み出て、「神の領分」に手を伸ばす為に考案し始めた。
 これらの方程式には、虚数領域という「本来触れ得ない概念」を記述するために、既存の数理魔術とは一線を画する数学的定義や公理系が用いられており、実質的にはほぼ別物と言えるほどの代物である。
「記述できないものを記述する」という、まさに神の領域を侵犯するような理論であるため、その難解さは常軌を逸しており、ごく少数の「特異を知る数理魔術師」同士ですら、互いに理論を理解し切ることが出来ず、本人以外に想定通りの魔術起動が概ね行えないという有様である。

 虚数領域方程式およびその原型は現在、七つ存在しているとされ、既に何らかの形で内容が確認されているものは以下のみである。

◆偽・虚数領域第二方程式
 虚数領域を擬似的な「ホストコンピュータ」と見立てて、そこに複数の人間の精神の余剰部分を接続して統合することで強力な計算能力を生み出すもの。
 また、現在はまだその役割を果たしていないが、「虚数領域を中継に用いると同時に、その領域に情報を損失なく記述する」為の模索が見られる。
 考案者は数理魔術師のリエナ・ネハ・グナーだが、原型となっている「虚数領域第二方程式」の考案者は、九十九里一(つぐもり・はじめ)という男である。
 彼は現在、消息不明のため、原型の完全な内容を知ることは出来ないが、どうも、現在のものとは少し機能の方向性が異なるらしい。

◆虚数領域第三方程式
 時間軸を超越し、複数の「可能性世界」に存在する人間の記憶――「平行記憶」にアクセスする為のもの。
 考案者はエルミリア・クラメールとされており、彼女の名義で数理魔術学派創設当初から残されている資料が存在する。

◆虚数領域第三方程式
 自身が存在する領域を高次的に記述することで、あらゆる「物理的な接触」を判定することが出来るもの。
 より分かりやすい表現をするならば、これを魔術として用いることで「当たり判定」を改変することが出来る。
 考案者は不明だが、数理魔術学派創設当初から、これについて述べた資料が残っており、第三方程式と共に数多くの数理魔術師の興味を惹いては、彼らの自信を砕いていった。


言界(げんかい)

 魔術に対する捉え方を表す概念。
 一般的に魔術師達は、言語が思考体系を形作ると考えており、それ故に"言語の界"といった旨の名前が付けられている。
 心言界(しんげんかい)と理言界(りげんかい)に大きく分けられる。
 心言界は直感的に逆流神経への入力を行う言界であり、ほぼ日常言語と等しい感覚で用いることが出来るため、多くの魔術は心言界で以ってコントロールされている。
 対する理言界では、一定の理論によって逆流神経への入力値を求めて魔術を使用する言界であり、感覚に頼らないが故に齟齬を生まない。
 理言界によって扱われるのが、数理魔術や、それを基にした狭義デジタル魔術である。
 理言界は、詠唱法や集中力(気分)に因らず、数式等を処理して正しい結果を導出出来れば、常に一定の効果が得られる点で優れているが、そもそも、その処理を行う事自体がハードであり、一部の、高速で思考を行える天才じみた人間にしか扱えないため、普及率は著しく低い。

五賢人会

 特別性を有する各組織に属する五人が、各々の状況に関して情報交換を行う為に、近年行われるようになった集会。主催は東岸原理であり、彼が「話の分かりそうな相手」を招待している。
 魔術に関する社会的統制を図る魔術学会と異なり、統制能力も、その意志も全く存在しない。故に、この会議によって代表者五人にもたらされた情報は、たとえそれを知っていることで救われた人命があろうとも、基本的には外部に流出させないという取り決めがなされている。
 メンバーは以下の五人。
  • 東岸原理(とうぎし・げんり)…東岸家。東岸定理、背理、合理ら東岸第五世代の祖父。家訓に忠実であるものの、東岸姉妹ほどに"例外的"な存在ではない為、彼女達には、自らの意志を押し付けられないでいる。
  • 神領荒夜(じんりょう・こうや)…神領家。神領の表裏双方の側面に顔が利く。既婚者の男性であり、大企業の経営者。
  • メリア・フランシール…魔術学会所属。強力な境界魔術師の女性であり、魔術学会の中で、最も「境界を守ること」に固執している。
  • 金枝真名(かなえ・まな)…《ホスピタル》所長。妖艶な女性であり、五賢人会のことを「有力なコネクション」だと考えている。
  • クレイス・アシェンバッハ…《教会》所属。白髪の青年。"パワーバランス"に拘っており、現在の混沌とした状況を維持すべきだと考えている。

  • 最終更新:2018-05-17 04:53:50

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