用語集:さ~そ


櫻岡市

 東京近郊にある街。
 そこそこの広さと人口はあるものの、これといった特色のない街。
 主に西部が住宅街、東部がオフィスビルや商店街、アミューズメント施設等の乱立する商業区画になっている。
 名門高等学園である、私立聖領学園が存在することでは有名である。
 さらに、治安があまり良くないことでも名が知れてしまっている。
 その理由は、この街が他の地域と比べて圧倒的に特異等の特別性に出遭う確率が高いからであり、精神ネットワークによって記憶を幾等シャットアウトしようとも、特異が住民の精神に無意識的な影響を与えて闘争心や暴力衝動などを刺激している為に、犯罪が起こりやすくなっているのである。
 また、精神ネットワークが作用するとはいえ、何らかの特別性の行使による物理的な影響は当然現れるため、怪奇現象に遭遇しやすいスポットとしても、しばしば話題になっている。

 東岸定理ら東岸家の屋敷や、神領烈花の屋敷など、特別性に関わる者達が多く生活している。
 何故この街が特別であるのかという事情についてを知る者は皆無だが、東岸定理はその例外の一人である。
 定理曰く、実のところ、かつての異なる時間軸の《アズ・リアル》には魔術という概念すらも存在しなかったが、"アンファング"という名の少女が別世界から櫻岡市に降り立った事で、櫻岡市が特別性の発端となり、時間軸の変遷に従って、特異であった魔術が世界に受容されていったのだという。
 

識術(しきじゅつ)

 魔術学会に認められている、十八の魔術学派のうちの一つ。
 学派のトップは、アンファングという、地面につくほどに長い銀髪を持つ少女であり、学会中枢第十八席のうちの第一席を頂いている。
 彼女は学会どころか外界に一切現れず、その姿を知る者も殆ど居ないため、半ば伝説的な存在と化している。
 識術という一学派の長であると同時に《アズ・リアル》における魔術の祖ともされている魔術師であるが故に、他学派の者でも、彼女に崇拝に近い感情を抱いている者は少なくない。
 そんなアンファングが、"発端"の名の通り、アズ・リアルに真の意味で魔術という概念をもたらした存在であることを知る者は皆無である。
 識術は、学派というよりは、単に魔術に関する一つの理論体系を纏めたものであり、何かに特化した目的がある訳ではない。
 それは、元々識術が"魔術"という呼称を持っていたからであり、故に、未だ魔術師の最大派閥となっている識術師の者達は"識術とは魔術であり、魔術とは識術"と考える者が多いのである。
 識術では、"セフィロトの樹"のモデルを用いて世界を解釈している。
 万物は、無限光からアツィルト界、ブリアー界、イェツィラー界、アッシャー界の順にセフィロトの樹を下へ辿っていき、何らかの影響として現実に顕現するが、その過程を逆流することにより、より高度で抽象的な事象に干渉するというのが、識術の考え方である。
 その成り立ちから、"何か特定のものに対する作用を探求する"或いは"特定の魔術的行為に関して探究する"といった目的が存在しないため、理論上はあらゆる現象を操作できる、非常に汎用的な学派となっている。
 但し、特定の行為についてベースとなるイメージを持たないため、何をするにも、完全に制御下に置くには時間が掛かる。
 その為、実際的には、平均的な識術師が使い分けるのは3、4種類程度の魔術的行為である。

 識術師が、どの程度、上位(よりアツィルト界や無限光(アイン・ソフ・アウル)に近い)のセフィラまで逆流できるかは、その者の才能に依存するところが大きい。

始原識(しげんしき)

 一部の特殊な人間が、生まれる瞬間に最初に見る、イメージのようなもの。
 始原識を見た人間は、イメージで見た概念に一生運命を拘束されることとなる。
 その運命拘束は非常に強力なものであるため、見た者にある種の特殊な力――始原識能力を与える。
 例えば「怒り」の始原識を持つ者は、一生にして、何かに憤怒し続けなければならない運命を背負う代わりに、憤怒のエネルギーを破壊力に変える力を持つことになる。
 「外から持ち込んだルールを《アズ・リアル》に押し付ける」のが特異なのに対して「自分の中に存在しているルールを外世界に押し付ける」のが始原識能力である。

視点分離

 PCが宿す特異能力の一つ。
 自らの居ない場所の様子を見ることが出来る、即ち、次元を超越して視点のみを分離させることが出来る力である。
 その力の意味するところは、"上位次元からPCをコントロールしている存在と視点を同期させる"ということになる。
 "東岸愛理の干渉"という、特異の中でも、最大級に例外なものを有している為に実現できる技。
 PCは、意図的にこの力を用いることが出来るが、PC自身は意図せずとも、(PLが望むことによって)PCにとっては"天啓"のような形で、この能力の恩恵を得ることが出来る。
 但し、これを用いて見た場所に、上位次元を観測する能力を有している者が居る場合、視点分離を行っていることに気付かれる場合がある。

狩猟者の剣

 偽世界に唯一存在する政府の、直属実働部隊。V∴G∴とも呼ばれる。
 少数の精鋭魔術師で構成されており、政府の指示に従って"荒事"をこなす。
 IからXIIの十二の席があり、より強い者が既存のメンバーに取って代わることになる。
 戦闘能力重視で入隊の可否が決定されるため、メンバーには、何処か人間性に問題を抱えた者が多い。
 特に、現在の最高戦力であるアマリアは、先代のナンバーⅠを殺害したうえで入隊している。
 組織の魔術師には、魔術(≒識術)の到達度合いに応じて、位階が設定される。
位階 位階名 到達セフィラ
1=10 Neophyte(ニーオファイト-新参者-) マルクト
2=9 Zelator(ジーレイター-熱心者-) イェソド
3=8 Practicus(プラクティカス-実践者-) ホド
4=7 Philosophus(フィロソファス-哲学者-) ネツァク
5=6 Adeptus Minor(アデプタス・マイナー-小達人-) ティファレト
6=5 Adeptus Major(アデプタス・メイジャー-大達人-) ゲブラー
7=4 Adeptus Exemptus(アデプタス・イグゼンプタス-被免達人-) ケセド
8=3 Magister Templi(マジスター・テンプリ-神殿の首領-) ビナー
9=2 Magus(メイガス-魔術師-) コクマー
10=1 Ipsissimus(イプシシマス-自己自身者-) ケテル

 なお、採用試験で4=7に達していないと判断された入隊希望者は、その時点で落第であるため、実質、1=10、2=9、3=8の位階のメンバーは存在しない。

 現メンバーは以下の通りである。
ナンバー 位階 名前 特徴
9=2 "魔術師" アマリア=シュロスシュタット 金髪ロングの幼女。サディスティックな性格の持ち主で、あらゆる魔術師を憎悪する。
7=4 "食人魔女" デルフィネア=ヘレンヘイズ ゴスロリ美女。過去の経験から、魔術を使う度に食人衝動に駆られる。識術至上主義であり、識術師以外を軽蔑している。
5=6 "殺戮の獣" ゲルハルト=アルトマン 銀髪の男。軽薄で暴力的であり、よくマチルダとコンビを組まされる。過去の戦いで片腕を失った、戦闘狂。破壊衝動の権化。
5=6 "崩壊天命" エルネスト=ローレンス 黒髪の青年。柔和な雰囲気は見せかけであり、本性は極端な破滅主義者にして、拷問マニア。
5=6 レオンハルト=アードラー 黒髪の寡黙な男。任務の中に正義を見出している。左腕は義手で、機関銃となっている。
5=6 "北欧の魔法師" チェルシー=イングリッド 金髪ポニテの女性。何事に関しても適当な性格で、神話や夢、幻想を愛する。雷を操る。
6=5 "B.T.E.S." アルファード=バルタザール 金髪で隻眼の、中性的な美少年。他人を切り刻むことに固執しており、"切断"に特化した魔術を使う。
6=5 リー=フェイレン(李妃蓮) 黒髪の中華少女。一見明るいが中身は狡猾。拝金主義者。武侠ドラマさながらの派手な戦闘スタイルは本命の攻撃のカムフラージュ。
5=6 "糸結い" ユイ=アマヌイ(天縫結衣) 黒髪ロングの少女。醒めているようで、自分が不要な状況を何より嫌う。魔術によって生成した銀糸で戦う。
7=4 "鉄の番人" マチルダ=カンセラル 金髪セミロングの女性。クールで、他人の実力を測る事に長ける。多様な魔術と無声詠唱を使いこなす、技巧派。
ⅩⅠ 4=7 "鉄の番人" マイ=サキムラ(咲村舞) 茶髪セミロングの少女。悲観的で、マチルダに憧れている。魔刀「式切」から繰り出す「六切剣」は強力だが、使い方が上手くない。
ⅩⅡ 8=3 "ファントム" 黒い外套を着ている、顔の見えない人間(?)。謎の多い存在であり、V∴G∴の会議にもあまり顔は出さない。複写魔術を使いこなす。

真語魔術

 魔術学会に認められている、十八の魔術学派のうちの一つ。
 現在の学派トップは、リイチ・クラークという男性であり、学会中枢第十八席のうちの第十六席を頂いている。
 真語魔術は、「この世界のあらゆる存在、現象には、個々の『真名』が存在しており、また、それらに言及するための文法であるところの『真語』が、世界を記述する本質的な言語として存在する」という立場を取っている。この真語を探求し、操る魔術学派である。
 真語を操るということはすなわち、世界の有様に直接干渉するに等しいと言えるため、真語を操ることで、現象の書き換えが実現される。

 理論的には、「ただ言葉にする」だけであらゆる結果を導くことができるが、実践的な場では、それを完全に実現するのはそう簡単な話ではない。
 真語を正しく理解し、そのすべてを自在に操るためには、すなわち、唯一無二であり絶対的な世界そのものと同一にならなければならないためだ。
たとえば、ある一説においては「Aという人物が発した『林檎』という言葉と、Bという人物が発した『林檎』という言葉では、それぞれのイメージにおいて全く同一の『林檎』となることはありえない」とされる。真語を操る際、このような相対性を持っていることは許されない。
 加えて、砂の一粒一粒、炎の揺らめき一つにも存在する真名すべてを把握するのは不可能だ。
 結果として、古典的な真語術師が生涯をかけても体得できる真語の数は限られており、彼らは「きわめて真語に近い類語」を用いて、世界に干渉するのが関の山であった。
 これらの実用性は、他の主要な魔術学派に比べて著しく低く、当初は「研究目的」での魔術探求に留まっていた。

 しかし、現代になって、真語魔術の世界に大きな技術革新が発生する。
 ある一人の強力な真語術師――魔術学会真語魔術学派「初代」学派長、エステル・ホワイトが、「各々の研究成果を秘伝とし秘匿するのは大いなる無駄である」とし、半ば強制的に知識技術の集積所として、非物理空間に広大な敷地を持つ「独立多元空間電脳魔術図書館」《図書館(ライブラリ)》を発足。
 真語魔術師達の持つ真語知識を強奪し、その知識を学派内や他学派に、惜しげもなく公開した。
 無論、世界の言葉である真語は、ただ見ただけで習得できるものではないが、それでも、その習得前例があるだけで難易度は大きく下がる。
 加えて、最新技術に触れた、現代型魔術師によって、その場に存在するモノに言及するための真語を、既知の知識で表現出来る範囲で解析する『真語解析アプリ』等が開発され、即応性、実用性が大きく増した。
 少なくとも「真語の類語を用いた魔術」程度のものであれば、他魔術にも引けを取らない程度の即効性を得たのだ。

 学派外向けにも開放されている《図書館》の有用性から、他学派とも親交があり、特に、境界魔術学派、数理魔術学派の学徒の多くと親しくしている。これはエステルが《図書館》を「開館」にこじつける際に、両学派に技術協力を取り付けた際の名残である。
 一方で、神智術師の多くは、真語魔術師たちの行為を「神の神秘を暴き、神の赦し無く同じ位置に立とうとする禁忌」と断じ、嫌悪している面がある。

神智術

 魔術学会に認められている、十八の魔術学派のうちの一つ。
 現在の学派トップは、シルヴィア・シルトヴァーンという女性であり、学会中枢第十八席のうちの第五席を頂いている。
 神智術は、神へと謁見し、一定の手続きによって承諾を受けた上で「神の智恵」を扱うことを目的として、神智学から、より実践的な方面へと発展して出来た魔術学派である。
 ここで言う「神の智恵」とは、世界のあらゆる事象が、過去から現在まで全て記録されている「アカシックレコード」を意味しており、神智術を用いることでアカシックレコードの各層にアクセスし、物事を知るだけでなく、限定的にその内容を書き換えることが可能となる。
「神へと歩み寄る」ことを理念としている為、神智術師には宗教家が比較的多いことで知られる。
 神智術の特徴は、一旦起動すると、モノや人、地形に暫く影響を及ぼし続ける、いわゆるエンチャント系魔術への適性である。
 識術などの場合、生成物減衰効果によって、術者が術から物理的・時間的に離れるなどして意識を逸らすと術の効果は霧散してしまうが、神智術は対象の性質をより根本的に書き換えるため、エンチャントを受けた対象は一時的に「最初からその性質を持っていた」という状態になり、たとえ術者が離れても、任意に設定された時間が経つまで効果が減衰することが少なくなる。
 この性質を利用して、神智術師は武器にエンチャントを施し、自らの手の離れたところでも使用できる、強力な魔術兵器を造り出すことが出来る。
 

神殿

 魔術学会に次ぐ規模を持つ魔術的組織。魔術結社としては、最も過激な部類に入る。
 ある種の選民思想を持っている集団であり、通常人より優れた能力を持っている魔術師に、世を忍ぶ義務はないと考えている。
 世界中に数多く存在している魔術結社を統制し、通常人との共存を取り計らう役割を持っている魔術学会とは相反しており、動きを見せる度に、魔術学会に妨害を受けている。
 魔術師で構成された戦闘部隊を保持しており、世界各地で起きている紛争等に干渉していることもある、武力組織としての一面を持つ。
 魔術学会は、各国の政府に対して中立と不干渉を貫いているのに対して、神殿は、積極的に社会の支配層に取り込み、暗部から支配していくことを目論んでいる。

神領家

 日本に古来より存在する家系であり、その血には特別な力を宿している。
 創造主により"特別であること"を許されている血筋のため、その力は特異には分類されず、世界を崩壊に導くこともない。
 "日本を守護する"という家訓を持っており、それを遂行するために《斑鳩機関》を組織している。
 或る時代に、家系の一部の者が、通常人と同じ生活を望んで離反してから血筋の拡散が始まり、現在では、その血統は日本中に分散することとなっている。
 その為、本家に近い者達はともかく、遠い分家の者達は、自らの血の秘密を知ることなく、一般人と同じように一生を遂げることも多い。
 それでも、何らかの要因により血の持つ力に覚醒し、独自で社会の闇に潜ったり、或いは《斑鳩機関》の存在を知って所属することもある。
 家業を継ぐことを選び、異能をもってそれを遂行することを選んだ側の者達は"裏の神領"、そのような任務から解放されることを望んだ側の者達は"表の神領"と呼ばれている。
 本家の屋敷の所在は不明だが、本家の血筋で、斑鳩機関の最重要戦力でもあるために大きな発言力を持つ、神領烈花(じんりょう・れっか)という、齢150を超える少女(?)個人の屋敷は、櫻岡市郊外に存在している。
 近代は烈花以降、優れた才能を持つ者が現れなかったようだが、現世代の本家の娘であり、烈花の曾孫にあたる神奈(かな)と姫子(ひめこ)の姉妹は歴代最高級のポテンシャルを秘めているらしく、二人は烈花の屋敷に住んで、私立聖領学園に通いつつも彼女のもとで修行している。
 
 なお、同じく特別な家系でありながら、持つ力が特異能力である東岸家との違いは、現実世界における、その設定の作成者である。
 神領家は、創造主である空乃詩が、かなり初期の頃に創造した設定であるため、《アズ・リアル》の概念境界に組み込まれているが、東岸家は東岸愛理によって創造されたものであるが故に、特異という形の歪みとして世界に認識されてしまっている。

数理魔術

 魔術学会に認められている、十八の魔術学派のうちの一つ。
 学派のトップは、エルミリア=クラメールという金髪の少女であり、学会中枢第十八席のうちの第十八席を頂いている。
 彼女は、識術師の長であるアンファング程でないにせよ、学会に姿を現すことは何故だか少ない。
 ただ、その扱いはアンファングとは真逆で、彼女の場合は伝説視されるどころか蔑視されている。
 その多くは、一つの学派を生み出したにしては、学会に居た時間が短すぎる彼女の才能への嫉妬心である。
 そもそも、彼女自身が生み出した数理魔術が、歴史の無い流派であるため、その革新性を理解されて中枢第十八席に加えられたとはいえ、良くない感情を抱いている者がまだ少なくない。
 数理魔術は、理言界魔術としては唯一の流派である(狭義デジタル魔術は、数理魔術の応用)。
 心言界魔術とは一線を画す世界観を持っており、数理魔術では、世界のあらゆる現象を、個体(オブジェクト)、性質(オブジェクトの持つパラメータ)、関数(オブジェクトに対する作用)で記述する。
 そして、望む結果を演算によって導き出し、逆流神経を通してアップロードすることによって、魔術の結果という形で、対応した出力を得ることが出来る。
 "感情などの不確定要素に拠らないため、正しい演算結果を出せれば正しい結果しか表れない"という、理言界の利点を最大限に受けられる魔術である。
 しかし、感覚に拠らないが故に、与えなければいけない情報量が圧倒的に多くなっている為、そもそも普通の人間は、まともに入力を行うことが出来なくなっているという、使用者の事を全く考慮していない仕様になっている。
 その為、使用者は心言界魔術に比べ、圧倒的に少ない。
 数少ない数理魔術の使用者は、創始者のエルミリアや、彼女の友人である東岸定理の様に常人離れした思考能力を持つか或いは、演算の補助をする魔術的アイテムを使用していることが殆どである。
 特に後者の使用法は、前者の様に稀有な才能を必要としないため、"狭義デジタル魔術"として発展を遂げている。

精神ネットワーク

 人間は生まれた瞬間から、深層心理の段階で、他人と何らかの繋がりを持っており、この広がりを精神ネットワーク(マイクロネットワークとも)呼ぶ。
 人間は、精神ネットワークに接続し、そのネットワーク上で共有されたイメージを受信することで、世界の認識の手助けにしている。
 心理学における"アーキタイプ"とは、この現象のことを示している。
 精神ネットワークを通して概念レベルで他者認識を行う事は、自己認識の確立にも繋がっており、もし精神ネットワークに接続出来なかった場合、他者が他者であるという理解に支障を来すため、人間らしい自我を確立できないという問題が発生する。
 例えば、生まれた時から隔離され、食料のみを与えられてきた人間などは、もはや一般的に"人間"と呼ばれる存在ではなくなっているだろう。
 ただ、精神ネットワークに依存しすぎることも問題である。
 精神ネットワークは、記憶修正をはじめとする"一般化"の作用を持つが故に、精神ネットワークに埋没しすぎて精神が一般性の中に溶け出し、最終的には自己を失う"マインドスライム現象"という被害が、社会の中で少しづつ見られ始めている。
 また、"特別性"の影響を受けた者はネットワークへの接続率が低下するため、一般化作用を受けなくなり、どこか精神に異常を来すことになる場合が多い(この場合の"異常"とは、単に気が狂うだとかそういうことに限らず、広い意味での"一般的価値観から見た異常"である)。
 例えば、特別性を得たことによって精神が一般的でなくなった結果、異常な程の利他精神に目覚めた少女が存在する(一般的な人間は、幾らかの利他精神はあれど意識上に、或いは無意識上に全く利己精神が無いということは基本的に有り得ない筈である)。

生成物減衰効果

 生成魔術によって生み出された生成物は、それに魔術的効果が有ろうが無かろうが、術者が其れを対象として意識を割くのを止めてから暫く経つと消散する。
 この効果により、魔術で生成した食糧や道具を大量配布したりといったことが不可能になっている。
 このような効果が生じるのは、魔術による生成物が、物体としての純度が極めて高いが故に、空間に適応できずに分解されていく為である。
 基本的に魔術生成物は、術者の管理を離れては存在できず、常に意識の対象として再構成を繰り返し続けることで存続できる。
 戦闘魔術師が自らの戦闘スタイルを構築していく上で、生成物の減衰を考慮することは重要になってくる。
 近接戦用の魔術や、一撃に重きを置いたタイプの魔術を使用するならばほぼ影響は無い。
 しかし、遠距離かつ大量に展開する場合、その全てに意識を払うことは現実的には不可能になるため、幾らかは必ず消滅するか或いは、減衰して、威力が著しく低下してしまう。
 例えば、神殿に所属する識術師であるメルフェーヌ=ブランフェルトは、拳銃を生成して戦うことを基本戦術としているが、彼女はそれを至近距離で、かつ牽制と割り切って使用しており、彼女の実際的な最大の武器は、駆動加速魔術と、それによる高速移動から繰り出される打撃攻撃である。

操霊魔術

 魔術学会に認められている、十八の魔術学派のうちの一つ。
 現在の学派トップは、デイ・オールターという少女であり、学会中枢第十八席のうちの第八席を頂いている。
 操霊魔術は、「世界には存在の原理となるエネルギー・<霊(プネウマ)>が偏在し、それが実存に宿り、そのものを概念的に存続させる<魂(ソウル)>となる」という世界観を持っている。
 これに従い、<霊>と<魂>への干渉技術を究め、物質の操作や構造把握を行うことを探求する魔術学派である。
 様々なモノに、望んだ性質の”霊”を吹き込んで魂に干渉したり、攻撃的な使い方としては、”霊”を抜き取って存在エネルギーを低下させたりすることも出来る。
 汎用性に長けた、識術などの現代魔術のように「現象の破壊と発生」を行うものではなく、「既に在るモノの操作」を行うことに特化している。
 それでも究め続ければ、動植物だけではなく、「魂が存在する」というイメージが難しい無機物やウイルス、或いは「情報そのもの」なども操作することが出来るようになり、様々な応用が利く。

 古典的な魔術学派ではあるが、呪術の流れを汲んでいることから実践的魔術の側面が強く、「分かりやすい恩恵」を得やすい為、未だに人気がある。
 ある程度、権威主義的なところはあるが、他の(魔術学会誕生前から魔術師をやっている)古参が多い学派ほどではなく、それなりに流動性もある為、界隈としてはかなり落ち着いている。
 問題は、現・学派長の「妖精のお嬢様」に、皆が期待を込めつつも現状、手を焼いている事だろうか。


空乃詩(そらの・うた)

 現実世界の櫻岡市で生きる少女。
 運動以外は何事もそつなくこなす、非常に優秀な美少女ではあるものの、幼い頃から特殊な価値観を有しており、周囲からは、いわゆる"電波なヤツ"だと考えられ、距離を置かれ続けていた。
 "内世界の創造"、要するに妄想を趣味としているが、それは"自分だけの世界"だと考えているので、作品として形にしたりはしたがらない。
 しかし、小学生時代に、後にも先にも唯一の、彼女に出来た友人である東岸愛理のことは認め、彼女には自身の世界観に干渉することを許している。
 昔から詩は、自身の世界観についての世界観(メタ世界観)である、世界創造の階層構造を現実にも当てはめていた。
 つまり、"自身が世界を想像行為によって創造しているように、自身もまた上位次元の誰かに想像された存在なのかもしれない"という考えを持っていた。
 高校生になって直後ほどの時期に致命的な難病を患い、入院する。
 彼女は至って冷静かつ厭世的な性格をしているが、"自らの世界を維持できないから"という理由で生には固執しており、それ故に自身の余命を知ってからは、表向きは平静に見えるものの、ひどく不安定な精神状態になった。
 愛理の定義した特別性である《特異》が《アズ・リアル》に現れ始めたのは、その影響である。

 愛理からは少々度を越した執着心を持たれており、愛理の分身のような存在である筈の東岸定理も、その姿は愛理自身のイメージではなく、詩にそっくりで、長い黒髪を持つ少女となっている。

  • 最終更新:2018-05-17 20:35:08

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード